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2012年6月18日

ニコライ・ホジャイノフ ピアノリサイタル

第5回ブダペスト国際ショパンフェスティヴァル&ピアノコンクールのオープニングコンサートにニコライ君ことニコライ・ホジャイノフが招聘されました。


június 17.-én vasárnap Színház Terem, 17 óra

Nikolay Khozyainov

Műsor:
Haydn D-dúr szonáta Hob XVI 33
Rachmaninov Etude-Tableau esz-moll op.33
Scriabin  Etude op.42-5
Prokofjev Szonáta no.7

Chopin Ballada F dúr op.38
Schubert Wanderer Fantasy
Liszt Transcendental Etude „Feux Follets”
Liszt  Mephisto keringő

会場はブダペスト16区の公民館。
郊外の公園の中にある公民館

会場入口


我が家からはものすごく遠いし、演奏会用の会場じゃないから音響はイマイチだし、全席500席ぐらいのとても小さなホールで、ピアノもフルコンじゃなくて小さいし。
う~ん・・・。

会場内部

小さなべーゼンドルファー。(休憩時間に調律中)

プログラム最初の曲はベートーヴェンop.110のはずが、会場で変更が発表されました。
ニコライ君がベーゼンでハイドンを弾く♪
ピアノが小さいし、あまり響かない会場ですが、それでもとても魅力的で可愛らしい演奏でした。

続くロシアもの3曲は一転して暗くおどろおどろした感じ。
私はベーゼンの低音が大好きなのですが、プロコのソナタ、特に最終楽章なんてすごい迫力でした。
ベーゼンいいなあ♪ (私はスタよりベーゼン派です。でも一番好きなのはベヒシュタイン)

後半はショパンのバラードF-dur。
2010年秋にショパンコンクールを聴きに行ったことを思い出します、懐かしいなあ。
あの時のニコライ君は18歳 、線が細くてどこか頼りなげで、同行した友人は「彼のピアノは素晴らしいけど、今入賞したらつぶされるかもしれないから本選に進まない方がいい」とまで言ったほど。
(「大丈夫よ、ツィメルマンだって18歳で優勝したじゃない」と私が言うと「え?あの時ツィメルマン18歳だった? とてもそうは見えなかったわ」と、当時いかに大物ぶりを発揮していたかを話してくれました)
あれから2年弱。舞台マナーは堂々たるもので 、演奏のスケールも大きくなったようです。

シューベルトの「さすらい人」、これ私も昔弾いたことがあるんですけど、やたら長くて退屈じゃないですか、この曲?
結局長さに負けて仕上げられませんでした。(恥)
でもニコライ君の演奏を聴いて、ああ、シューベルトってこういう風に歌わせるのねえ、と感心しきり。
会場からは一段と大きな拍手でした。

最後のリスト2曲は圧巻でした。
リストって弾き手を選ぶと思うんです。
ただ指が回るだけではダメで、高度な技術の先にあるものを表現しないといけません。
表現力と超絶技巧を兼ね備えたピアニストだけがリストを弾きこなすことが出来ます。
その点、ニコライ君は合格ですね。


アンコールはリストの「”フィガロの結婚”とドン・ジョヴァンニ”のテーマによる幻想曲」。
あの小さなベーゼンがどうしてここまで鳴るの? と驚くばかりです。

このリサイタルは、先にも書きましたようにショパンフェスティヴァル&コンクールのオープニングコンサートで、客席はコンクール審査員と出場者で埋め尽くされていたのですが、聴衆は「Bravo!」を連発していました。


さて、演奏会終了後ロビーに出たらロビーの隅っこでボーっと立っているニコライ君発見。
思わず駆け寄って「素晴らしい演奏でした。ダブリンコンクール優勝おめでとう!」と声を掛けたら「どうもありがとう」とはにかむような笑顔で答えてくれました。
うわぁ、すれてないなあ、ええ子や。
これからも応援するよ! 次はMupaかリスト音楽院大ホールで弾いてや! と言おうと思ったら「あなたは日本の方ですね?」と聞かれました。
「はい、そうです」と答えると「*日本のジャーナリストからあなたのことは聞いていますよ。今日は聴きに来てくれてどうもありがとう」と言うではありませんか!
「え???」と頭の中が「?」でいっぱいになってあたふたする私。
さっきまではにかんでいたはずのニコライ君、一瞬にして不敵な笑みを浮かべているではありませんか。
ああ、この子は天使と悪魔が同居してると常々思っていたけど、天使が悪魔に変身する瞬間をこの目で見てしまいました!(笑)

* 日本のジャーナリスト云々の話は、ツィッター仲間の音楽ライターの方が、私がブダペスト公演を聴きに行くことをニコライ君に伝えたからで、謎は解けたけど、ほんまにびっくりしたわ~!

で、もしかして私がわざわざ日本からこの演奏会のためにブダペストに来たと勘違いして感謝してくれているとしたら申し訳ないので、ブダペストに住んでいることを伝えると「ブダペストに住んでるの? 日本人なのに? ブダペストに住んでるんだ~」と何度も言っていました。

デジャヴ。

以前キーシンに「ブダペストに来て下さい」と直訴した時も「ブダペストに住んでるの? 日本人なのにブダペスト?  へえ~」と何度も言われました。

ロシア人にとって「ブダペスト在住日本人」は何かツボを刺激する存在なのでしょうか?(笑)

12 件のコメント:

  1. 初めまして。
    いつも楽しく拝見しております。
    ニコライ君、ハイドンとスクリャービンに変更とは、きっとシドニーを見据えてのことなんでしょうか。
    想像以上にローカルなロケーションの会場ですね(^_^;)
    それにしても、キーシンと同じ反応って面白いです。
    やっぱり同じクルクル巻き毛系だから?(笑)

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    1. はじめまして。コメントありがとうございます。
      プログラムの変更はシドニーに関係があるのかもしれませんね。
      シドニーでもいい結果を出してほしいです。頑張れニコライ君!

      会場は小さくて音響もイマイチでしたが、ニコライ君のピアノはそんなハンディは吹き飛ばす威力がありました。
      これからもどんどん成長していくでしょう。
      キーシンのような巨匠に育ってほしいです。
      (服のセンスはニコライ君の方が良さそうですね:笑)

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  2. フランシス2012/06/19 14:26:00

    やっぱり東欧と日本人の組み合わせ、しかも国際結婚となると、何やらドラマを感じてしまうのではないですか。
    クーデンホーフ光子の物語とか(古過ぎ?)

    マニラ在住日本人男.....うさん臭いだけやな。(自爆)

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    1. クーデンホーフ光子って!(爆)
      最近は日本人とハンガリー人のカップルも多いんですよ。
      私が来た頃はまだ片手で数えられるほどでしたが、今は一体何組の御夫婦がいるのやら?

      従弟がマニラ勤務で、まさに「マニラ在住日本人男」ですよ。
      マニラ行きの便はビジネスマンと胡散臭い(失礼)人が混在している模様。(笑)

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  3. たーさん2012/06/20 8:04:00

    そうか。クセ毛のロシア人天才のツボは
    そんなところにあったのですね。
    いやーん、バラードさん!
    ニコライ君に「あなたのこときいてます」
    なんていわれるなんてすごーい♪
    私もキーちゃんに「ロシア語でトイレの場所をきく日本の方ですね。トイレはこちらです。」って言われたかった~(嘘)
    隅っこでボーっとしているのもデジャブでは・笑
    ニコライ君ってヤマハのイメージがありますが、
    ベーゼンでの演奏をきいてみたいです。(生演奏で~!)

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    1. えへへ~、言われちゃいましたよ、「あなたのこと聞いています」って♪
      そこで「あら、アタクシのこと御存知なのね。おっほっほ」と大人の余裕で艶やかに微笑むことが出来ればよかったのですが、「え?え?なんで?」とあたふたしてニコライ君に笑われました。(笑)

      「ロシア語でトイレの場所を聞く日本の方」!! いいですね~、是非実現させて下さい。
      私は既にキーちゃんに「ブダペストに来い来いとうるさいおばちゃん」と認識されてしまいました。(笑)

      ニコライ君、ベーゼンも上手く弾きこなしていましたよ。
      弘法筆を選ばずですね。
      あ、でも「隅っこでボーっと」はデジャヴじゃないです。
      だってニコライ君は一人だったけど、キーちゃんの後ろにはいつもママ&センセが。(笑)

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  4. 初めまして。レーピンで検索していて偶然来ました。
    とても読み応えのあるブログで、時間の過ぎるのも忘れて見せていただいてます。昨年、佐渡裕:ベルリン・ドイツ響と共演したボジャノフを聴いてぶっとび、今年のリサイタルも聴きに行きました。ピアノはあまり聴いたことがないのですが、明らかに他の人とは違う彼独自の世界があるように感じました。また、おじゃまして楽しませていただきます〜。

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    1. はじめまして。コメントありがとうございます。
      レーピンについては旧ブログにも演奏会の感想など書いておりますので、お時間のある時に御笑覧下さい↓
      http://ballade.exblog.jp/9198379

      ボジャノフは、ショパンコンクールで実演を聴いた時はあまり好きになれませんでしたが、後からじわじわと「あのロンドもう一度聴きたいな」と思うようになりました。
      今回聴いたホジャイノフ(カタカナで書くと名前が似ていてややこしいですね)はショパンコンクールから注目していて、この度ブダペストで聴くことが出来て嬉しいです。
      ショパンコンクールのことも少しだけ書きましたので、こちらも併せてご覧下さいませ↓
      http://ballade.exblog.jp/14835627/

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  5. バラードさん、ご無沙汰しております♪

    少し前の記事で、ラーンキとコチシュの懐かしい映像
    見せていただきました。
    ラーンキ様やっぱり素敵!
    当時TVで見て一目惚れでしたよ(その後爪様に浮気した
    不届き者^^;)

    コチシュはピアノというより音楽の天才ですね。
    繊細で神経質そうな青年のイメージから、すっかり
    貫禄が付き今ではハンガリー音楽界の重鎮といった
    風情ですね。

    ロビーの隅でボーっと立ってるニコライ君。
    「ブダペスト在住日本人」に反応するニコライ君。
    なんか微笑ましいですね(笑)
    キーシンともそんな会話を交わされたなんて、羨ましいです!

    私はまだ生ニコライ君聴いていないので、次の来日を
    楽しみに待ちたいと思います。

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    1. ラーンキ様本当に麗しいですよね。
      私もTVで見て一目惚れした一人です。(笑)
      「ハンガリー人ってかっこいいなあ。いつかハンガリーに行ってみたい」と当時思ったのですが、まさかハンガリーに来てアザラシと結婚することになるとは思いもよりませんでした・・・。

      ニコライ君、あんな大迫力の演奏をするのに、素顔は可愛らしい男の子で、天使のようでしたよ。
      でも一瞬にして悪魔にもなる、不思議な魅力の持ち主です。
      生ニコライ君はお薦めですよ~、機会があれば是非!

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  6. バラードさま、こんばんは。
    素晴らしいレポートを有り難うございました。
    遂にブダペストでもニコライ君の演奏会が実現しましたね。
    あの年代物らしきベーゼンドルファーから奏でられるリストやシューベルト、是非聴きたかったです。
    アンコールはモーツァルトのオペラのトランスクリプションが2曲だったのですね。
    彼のフィガロは実際に度々演奏されていますが、ドン・ジォヴァンニは、ダブリンのセミファイナルのプログラムにリストアップされたものの、結局は演奏されなかったという代物です。
    殆どのファンが聴いたことのないこの曲をお聴きになれたとは本当に羨ましい限りです。

    堕天使ももとをただせば天使とか。
    天使と悪魔は表裏一体らしいので、バラードさまのコメントにもすっかり納得いたしました。
    明と暗、光と影が交錯する不思議な魅力、それこそが彼の芸術の醍醐味かもしれませんね。
    それにしても今後のニコライ君の動向から益々目が離せなくなりました。
    まもなく始まるシドニー国際コンクール、聴衆や審査員を驚愕させる最高の演奏ができるよう心から願っています。

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    1. 稚拙な感想文でお恥ずかしい限りですが、当日の雰囲気が少しでも伝わったのなら嬉しいです。

      ピアノは会場に常設されているものではなく、この日のためにわざわざウィーンから運んだそうです。
      それならもう少し大きなピアノにすればよかったのに、とも思いますが、あの会場にフルコンは合わないのかもしれません。
      ピアニストのリサイタルというより、ピアノの発表会のような会場でした。(苦笑)

      ニコライ君がベーゼンドルファーを弾く機会は滅多にないでしょうし(日本では契約の関係でヤマハしか弾かないと聞きましたが、そうなんですか?)、珍しいアンコールも聴けて、遠くまで聴きにいった甲斐がありました。

      シドニーでもリラックスして自分の持ち味を最大限に発揮して欲しいですね♪
      そしてまた近いうちに生演奏を聴く機会があればいいなと思います。
      ポーランドではよく弾いているようなので、近いうちに聴きに行きたいです。

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