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2013年3月9日

天上のシューベルト

行ってきました~~~♪




JEWGENIJ KISSIN

Donnerstag, 7. März 2013 19:30


Interpreten

  Jewgenij Kissin, Klavier

Programm:

Joseph Haydn
Sonate für Klavier Es - Dur, Hob. XVI:49
Ludwig van Beethoven
Sonate für Klavier c - Moll, op. 111
-------- Pause ----------
Franz Schubert
Impromptu für Klavier f - Moll, D 935/1
Impromptu für Klavier B - Dur, D 935/3
Impromptu für Klavier Ges - Dur, D 899/3
Impromptu für Klavier As - Dur, D 899/4
Franz Liszt
Ungarische Rhapsodie Nr. 12 cis - Moll
  ("Mazeppa")


以前書きましたが、私がキーシンを聴くようになったのは最近のことです。
10年前、ウィーンに用事があって、たまたまその日キーシンの演奏会があったので「ついでにキーシンでも聴くか」というノリで聴きに行ったらシューベルトにノックアウトされました。
あの時アンコールで弾いた即興曲op.90-3(D 899/3)がプログラムに入っているので、「あの感動よ、もう一度!」ととても楽しみにしていました。

彼の美しい音に浸るため、2階中央席最前列ど真ん中の席を取りました。
座席からの眺め。ピアノの音がスーッと飛んできて、私にとってはここが最高の席です。
そして、想像通り、いえ想像以上に素晴らしかったんです、シューベルト!
op.90-3はもちろんのこと、Op.142-3(D 935/3)があんな美しい曲だったとは!
そしてop.90-4。
これって技術的にはそれほど難しくなくて、子供がよくピアノの発表会で弾きますよね。
私も大昔に弾いたことがあって、この曲のことはよく知っているつもりでいたけど、キーシンが弾くと「ああ、こんな深い曲だったんだ」と改めてこの曲の魅力を再発見しました。
いつもながらキーシンの楽曲への取り組み方、理解の深さに感動。
どんな曲もキーシンが弾くと新たな面が見えますね。

いやあ、それにしてもほんまによかったわ~、シューベルト。
天国に連れて行かれたような気分で、まさしく神憑った演奏でした。
客席からも盛大な拍手と歓声が飛んでいました。

シューベルトのあまりの素晴らしさに前半の記憶が飛んでしまいましたが一つだけ。
ベートーヴェンの第2楽章をキーシンは非常にゆっくりしたテンポで弾いたんです。
キーシン独特の「ため」がふんだんに盛り込まれたといえばいいでしょうか。
あのテンポで音楽の流れや緊張感が切れないのはさすがだと思いましたが、私個人の好みとしてはあのテンポはちょっと苦手です。
(あくまでド素人の私個人の感想です)

さて、感動のシューベルトに続いてリストのハンガリー狂詩曲第12番。
これは爆演でした!
一体今何が起こっているの? と頭の中が「?」だらけになる、よくまあピアノからこれだけいろいろな音が出せるものだと驚くような迫力と華やかさに満ちた演奏。
先程のシューベルトには神が降臨したと思ったけれど、これはリスト様ご本人が降臨したかのような演奏でした。

会場総立ちの中、ステージに登場したキーシンはアンコールにグルックのメロディを演奏。
これがまたシューベルトと同様、心の中の一番深いところにある悲しみや喜びを引き出すような演奏で、「キーちゃん、まだ若いのに(私と比べて、という意味です)どんな人生歩んできたん?」と問い質したくなりました。

スタンディングオヴェイションとブラーヴォの嵐の中、続いてリストの超絶技巧練習曲第10番 f-moll。
いや~、これもすごい爆演、すごい迫力でした。

素晴らしい演奏を聴かせてくれてありがとう。天国を垣間見せてくれてありがとう。
そういった思いを込めて拍手をしていたら、キーシンがステージに出てきてお辞儀をしてからちょこんと椅子に座るではありませんか。
「え? まだ弾いてくれるの?」とどよめく客席をよそに弾き始めたのはシューベルト(リスト編曲)の「ます」。
これがもう~、なんとも可愛らしくもお茶目な「ます」で、リストの爆演に興奮しきった我々聴衆にとっては清涼剤のような演奏でした。

この日の演奏を聴いてふっと思い出したのですが、私が10代の頃、ある音楽評論家が「演奏家は40歳になってから真価を発揮する」と発言しました。
(確か野村光一さんだったと思うのですが・・・ちょっと自信がありません)

それを読んだ時は、ちょうどその頃大人気だったハンガリー三羽烏やツィメルマンと、それに群がりアイドル扱いする若い女性ファンを批判した発言だと思ったのですが、今この歳になってわかります。
人間、40年位生きないと酸いも甘いも噛み分けられません。
40歳を越えると、若い頃とは一味も二味も違った物の見方が出来るようになるし、演奏にも反映されるのだと思います。
今回のプログラムの最後の曲とアンコールはキーシンが10代の頃からよく演奏していた曲ですが、今の年齢でこそ出せる味わいがありました。

楽友協会

それにしても(何度も書きますが)素晴らしいシューベルトでした。
次は9月にブダペストでキーシンを聴く予定ですが、プログラムにはシューベルトのソナタが含まれているので楽しみです。

ああ、書きたいことはたくさんあるのに、感動しすぎて言葉で表せません。
なんだか取り留めのない文章ですみません。
(後で追加訂正するかもしれません)

18 件のコメント:

  1. お待ちしておりました!
    やはりシューベルト、この世のものとは思えない美しさでしたか!
    きっと大切なお父様との別れも経て更に天上の音楽に近づいたに違いないと想像していました。
    最上の音楽を最上のお席で聴けてまるでキーシンがBalladeさんのためだけに奏でているかのようだったでしょうね( ´艸`)

    ハイドンはいかがでしたか?(笑)
    パリでも滅多にない総立ちのアンコールだったそうです。
    9月にはもう新しいプログラムをお聴きになれるのですよね?うらやましい限りです。

    ともあれ貴重なリポートありがとうございましたm(_ _)m

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    1. シューベルトは10年前に聴いた演奏に比べてますます円熟味を増し、私の貧弱な語彙では表現出来ない実に素晴らしい演奏でした。
      お父様のこと、その他もろもろを乗り越えて達した境地なのかと思います。

      座席は最高でした♪ 手元もペダリングもよく見えて、もちろん音響は素晴らしかったし。
      ハイドンもよかったですよ。私はキーシンのハイドンが好きなので、もっと弾いてほしいと思います。
      でも、シューベルトで前半の記憶がほとんど飛んでしまいましたけど。(笑)

      9月に聴くプログラムは来年日本でも演奏しますね。
      日本での演奏をお聴きになられましたら、是非感想を聞かせて下さいね。

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    2. 昨年のロンドンで聴いた方が彼のハイドンは
      重すぎると仰っていて・・・全体的にあまり
      よろしい出来ではなかったようなので
      やはりお父様を亡くしたショックから
      どんより気味な演奏だったのでしょうか。

      あはは、シューベルトで記憶が飛んだ(笑)
      それくらい強烈な感動だったんですね。
      でもなんとなく想像出来ます。私も10年も前の
      シューベルトが忘れられないくらいですから。

      来年春。アンナ先生とお母様がとにかく
      お元気でいて下さらないと来日も危うい(汗)
      と思ってしまう今日この頃です。
      今回も楽屋訪問できましたか?
      Balladeさんのお顔観てすぐに反応されたのでは?
      そんな奥様を温かく見守る旦那様はご立派ですね(笑)

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    3. 楽屋にお邪魔したら、顔を見るなり「9月にブダペストに行きます」とおっしゃいました。
      (秋のお越しを楽しみにしていると伝えようと思ったのに、先を越されてしまいました)
      以前、上沼恵美子が乗り移った状態で「ブダペストに来て!」と直訴したのがよほど怖かったのだと思われます。(笑)

      夫は寛大と言うか、私がキーシンのことを男性としては見ていないのがよくわかっているので何も申しません。
      ミッキー・ローク(大ファンなんです♡)にはメラメラ嫉妬の炎を燃やしてますが。(笑)

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  2. はじめまして。
    …というか実はSNSでも存じ上げておりましたが…^^;
    はじめてコメントさせていただきます。

    私もこのリサイタル行きました!
    シューベルト、本当に天国に連れてっていただいたようでしたね!

    言葉にするのももったいないと思われるくらいですが。

    終演後、私は楽屋がわからなくて会えませんでしたが…
    次回行く時は私も必ずお邪魔したいと思います。

    ではでは。突然失礼いたしましたm(__)m

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    1. ご訪問&コメントありがとうございます。

      同じ会場にいらっしゃったのですね!
      どこかですれ違っていたかもしれませんね~。

      あのシューベルトは本当にこの世のものとは思えませんでした。
      言葉で表現することは出来ないし、うささんのおっしゃる通り、言葉にするのがもったいないですね。

      あれから1週間以上経ったのに、まだあのシューベルトが耳から離れず、ぼーっとしています。
      一生忘れられないシューベルトです。

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    2. 返信ありがとうございます。

      このプログラム、日本で聴けないので、本当に行って良かったです!神様に感謝。
      一生忘れられない最高のシューベルトでした。

      次のプログラムにもシューベルトがありますね!
      とても楽しみです!

      その前にまたウィーンに飛んでいけたらいいのですが。

      私は1階の前の方にいたのですが、ちょっとうろうろしていたのですれ違っていたいかもしれませんね(^^)

      ウィーン大好きなのでぜひまた行きたいと思います。

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    3. 本当に素晴らしいシューベルトでしたね♪

      次のプログラムも魅力的ですね。
      そろそろ予習を始めようと思って楽譜は譜面台に置いたものの、先日のリサイタルを思い出してボーっとしてなかなか進みません。(笑)

      私は2階席でしたが、休憩時間に1階でお茶していましたよ。
      きっとすれ違っていたでしょうね。

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  3. こんにちは! 覚えていらっしゃらないと思いますが、以前もキーシンのコンサートの感想のところにコメントさせていただいたことのある、スイス在住のrubyです。私も先月チューリッヒ公演へ行ってきて、balladeさんと同じようにシューベルトでうっとりしちゃいました。本当に素晴らしいピアニストですよね。ちなみにアンコールは2曲で「ます」はなかったです(涙) 2曲弾き終わった後、観客はパタッと拍手をやめたんです(涙) チューリッヒって毎回こんな感じ・・・。今度私もウィーンで聞いてみたいなぁ。隣なのにウィーンに行ったことないんです(涙) 今年の秋は私の住んでるルツェルンでソロ・リサイタルとピアノ協奏曲で2日間弾いてくれるんでチケット争奪戦頑張ろうと思います。頑張って拍手してアンコールも弾いてもらいます(笑) シューベルトのソナタ、楽しみですね♪

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    1. rubyさん、お久しぶりです。コメントありがとうございます。
      もちろんよく覚えていますよ。確かヴェルビエにも聴きに行かれたんですよね。
      シューベルトの即興曲は本当に素晴らしかったです。
      恥ずかしながら、あんなに美しい曲だとはキーシンの演奏を聴くまで気付きませんでした。
      来シーズンのシューベルトのD-durソナタも楽しみです。

      ルツェルンでソロとコンチェルトですか、いいですね~♪

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    2. 覚えていてくださって嬉しいです。そうです、ヴェルビエも行きました♪
      balladeさんはキーシンに覚えてもらっちゃってるんですね!すごいです(*^^*)

      ちょっと質問しちゃっていいですか?
      まわりにキーシンファンがいなくて誰にもきけなかったんですけど、前年のプロで、イスラエルかどこかでのコンサートがYOUTUBEでアップされてたんでよく見てたんですけど(すでにいくつか削除されちゃったんですけど(涙))あれはどこかでTV放送されたものなのかなぁと。(DVDで発売されたものだったら是非欲しいんですけどそんな感じではないし、盗撮ではなさそうだし) 何かご存知でしょうか・・・。(どのことを言ってるのかもお分かりになられないかもしれないのでその際は無視してください^^;)

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    3. いえいえ、すごいのは私じゃなくてキーシンの記憶力です。
      (それと私に乗り移った上沼恵美子:笑)
      ブダペストに招聘する音楽事務所の方とお話しする機会があったのですが、「毎年ウィーンに来る熱心なファンにブダペストに来るよう言われた」と語っていたそうで、相当インパクトが強かったようです。(笑)

      ところでイスラエルのコンサートは、イスラエル・フィル創立75年記念コンサートの一連で、当時ネット配信されていたと思います。
      (きっとTVでも放送されたと思います)
      バーバーのソナタは是非録音していただきたいですね。
      一応ご本人に直訴して「そのうち」というお返事を頂いたのですが、そのうちっていつ? と再び直訴したいです。

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    4. キーシンの記憶力も確かにすごいですけど、balladeさんの熱心さのたまものでしょうね♪ 他のブダペストのファンの方も嬉しいと思います♪ とても美しい都市だと聞いてます。私もいつか行ってみたいです。

      イスラエルのコンサートの件、ありがとうございました。あの映像いいですね~。凄すぎて、しばらく開いた口がふさがりませんでした。
      balladeさん、録音の直訴またお願いします(笑)

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    5. いえ、私じゃなくて私に乗り移った上沼恵美子のお陰です。(笑)
      ブダペストにも是非遊びに来て下さいね。
      9月にキーさん来ますよ~♪

      バーバーとプロコ8番ソナタは絶対に録音して後世に残していただきたいです。
      9月にブダペストで直訴したいと思います。
      (あ、またあのオバチャンや!と逃げられなければ:笑)

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    6. 10月のルツェルン公演の際に、もし私にも上沼恵美子が乗り移ったらがんばってみます?!(笑) ダブル直訴で洗脳術。・・・ひどいファン^^;

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    7. 9月と10月に上沼恵美子(が乗り移ったファン)に直訴されたら絶対録音してくれると思います。(笑)
      頑張りましょう~!

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  4. わー、乗り遅れてしまいました(^-^;
    シューベルトの90も142も全部好きで、深いなぁとじわじわきて
    ときどき思い出しては聴いています。
    残念ながらキーシンの演奏は未経験なので
    (たしかCDも出ていませんよね)
    90-3を聴けたバラードさんがとってもうらやましいです♪
    グルックのメロディもほんとうにいいですよねぇ。
    バラードさんの記事を拝見して私も天上の気分を味わいました。
    秋のプログラムも楽しみですね♪

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    1. シューベルトの即興曲はどれも深い味わいがありますね♪
      先日のキーシンの演奏は私の乏しい語彙では表現出来ない、とにかく美しく素晴らしかったです。
      CDは出ていないと思います。いつか録音していただきたいです。
      (あ、これも直訴しようっと! ウィーンではあまりにも感動して直訴は出来ず「即興曲Ges-durが特によかったです」としか言えませんでした)
      シューベルトのop.90-3とグルックのメロディが聴けて幸せでした~♪

      来年はいよいよ来日ですね。
      また日本でのコンサートをの様子や実愛さんのご感想を教えて下さいね。

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